裁判所を反原発のとりでに!
稼働中の関西電力高浜原発が停止しました。高浜原発3・4号機の運転禁止求めて申し立てられていた仮処分について、大津地裁は9日「過酷事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点がある」として運転を差し止める決定をしました。4号機はトラブルですでに停止していますが、仮処分決定は直ちに効力を持つため、3号機も10日に停止しました。福島原発事故後、再稼働や運転を禁止する司法判断は3例目です。このうち、規制委員会によって新規制基準に適合するとされて再稼働した原発が停止させられるのは初めてのケースです。今回の仮処分は大津地裁の決定であり、関西電力の不服申し立てによって覆される恐れがあります。ただそうであっても、稼働している原発が停止した事実は重大であり、今後の反原発運動の大きな弾みになります。
高浜原発の運転差し止めを決定した大津地裁の仮処分は、いくつかのポイントがあります。まず、「発電の効率性は甚大な災禍と引き換えにすべき事情であるとはいい難い」としている点です。福島原発事故が取り返しのつかない人的および物的さらには精神的災禍を及ぼしたのは、誰が見ても明らかなことです。こうした未曾有の災禍を引き起こすことを無視して、経済的効率性を理由として原発再稼働をしてはならないということでしょう。また、「原発事故がもたらす環境破壊の及ぶ範囲はわが国を越える可能性さえある」とも糾弾しています。さらにまた、大規模な災害をもたらした福島原発事故の検証が道半ばで、津波が主原因なのかどうかも不明であると指摘しています。
大津地裁の仮処分は、関西電力だけでなく規制委員会や新規制基準に対しても厳しい目を注いでいる点です。あまりに当然のことですが、注目すべきポイントです。「安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠だ」としています。また「関電と規制委員会がこの点に意を払わないなら、新規制基準策定に向き合う姿勢には非常な不安を覚える」とも指摘しています。表現は感情を抑制していますが、福島原発事故の原因究明がなされないなかで、安全対策が行われたとして規制委員会の審査に通過して再稼働したことを指摘し、関電と規制委員会を厳しく糾弾しています。
仮処分は「過ちに真摯に向き合うなら、〜過酷事故が生じても致命的な状態に陥らないようにするとの思想に立ち新規制基準を策定すべきだ」としています。福島原発事故の災禍を直視するなら、決定的事態に至らないように新規制基準は原発を厳格に規制しなければならないということでしょう。そして、「関西電力の主張や説明の程度では、新規制基準と設置変更の許可がただちに公共の安心、安全の基礎となると考えることはためらわざるを得ない」とも断じています。ここでは関電の主張や立証を問題にしていますが、重要なポイントであると考えます。
仮処分決定は、「人格権が侵害される恐れが高いことについては、最終的な主張立証責任は申し立てた住民が負うと考えられる」としています。しかし、「関電が原子炉施設の資料の多くを保持し、原発を運転しているのだから関電が根拠や資料を明らかにすべだ」としています。また、「(関電の主張や説明は)規制委員会が関電に設置変更許可を与えた事実のみで、一応の主張と説明があったとすることはできない」と関電の姿勢を弾劾しています。大津地裁のこの判断は画期的だと思います。24年前の伊方原発の運転差し止めを求める裁判の最高裁判決で、立証責任は本来原告が負うものとしています。しかしその一方、「被告に相当の根拠、資料に基づいた主張や立証をする必要がある」としています。ただ実際の裁判などでは、立証責任の多くが原告や住民に負わされていました。
今回の仮処分決定では、過酷事故対策や最大の争点とされた耐震設計の目安となる基準地震動の関電側の立証や説明について、大津地裁は厳しい判断を示しています。福島原発事故の原因について関電は、津波の想定が不充分であったことを主張しています。これに対して大津地裁は、「福島原発事故の原因は津波だと特定されたわけではない。同様の事故を防止して安全確保対策を講じるために、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。この点について、関電の主張と説明は不充分である。」と断じています。また耐震性能についても、「当裁判所に十分な資料は(関電から)提供されていない」とか「相当な根拠、資料に基づき(関電が)主張と説明をすべきところ、〜認めるに十分な資料はない。」などと関電に対して厳しい判断を下しています。
今回の仮処分決定は、基本的に高浜原発がそもそも危険な存在だという前提に立っています。しかし、仮処分決定を下した大津地裁の山本善彦裁判長は、2014年の再稼働前の高浜原発3・4号機をめぐる仮処分申請を「規制委員会がいたずらに早急に、再稼働を容認するとは考えがたい。差し止めの必要はない」として申請を却下しています。また山口地裁では、上関原発建設予定地をめぐり、山林の入会権確認を求めた訴訟で住民側の請求を退けています。このように、山本裁判長は、必ずしもいわゆる「反原発派」とか「脱原発派」とか呼ばれる裁判長ではありません。山本裁判長は、合理的で常識的な判断を下したに過ぎません。
「原発訴訟は最高裁判所の制約が厳しく、裁判長の個人的判断を下すことはできなかった。原発推進政策に反する判決を出せば、左遷させられることを覚悟しなければならなかった。しかし福島原発事故後、裁判長の柔軟な判決を最高裁も容認するようになった。」というような報道もあります。しかし、三権分立、裁判や裁判官の独立が憲法で保証されているにもかかわらず、最高裁は違憲立法審査権を事実上放棄し、政権の政策に寄り添った判決を連発してきました。原発訴訟でも、原発差し止めの判決や仮処分決定が数例下されていますが、おおむね住民側の主張が退けられている流れに大きな変化はないと思います。
国家権力は従来の住民側勝訴の判決や仮処分決定について、裁判長を「変わった」思想の持ち主で「個人的」感想を判決などに盛り込んだ例外的な属人的行為としてとらえていました。しかし、このところ住民側勝訴の判決や仮処分決定が下される頻度が高くなっていることも事実です。そもそも裁判は、独立が保証されながらも国家機関に属する裁判官によって、権力が定めた法の枠内で結果が出されます。とは言っても、国民の意見を完全に無視することはできません。だからこそ、法廷の外の声、反原発の声を盛り上げることが重要になると考えます。市民や労組が反原発の団結力を街頭や職場などで発揮し、原発廃炉の機運を盛り上げましょう。それが第2第3の山本裁判長を出現させることになります。
NAZEN 山陰 福間
高浜原発の運転差し止めを決定した大津地裁の仮処分は、いくつかのポイントがあります。まず、「発電の効率性は甚大な災禍と引き換えにすべき事情であるとはいい難い」としている点です。福島原発事故が取り返しのつかない人的および物的さらには精神的災禍を及ぼしたのは、誰が見ても明らかなことです。こうした未曾有の災禍を引き起こすことを無視して、経済的効率性を理由として原発再稼働をしてはならないということでしょう。また、「原発事故がもたらす環境破壊の及ぶ範囲はわが国を越える可能性さえある」とも糾弾しています。さらにまた、大規模な災害をもたらした福島原発事故の検証が道半ばで、津波が主原因なのかどうかも不明であると指摘しています。
大津地裁の仮処分は、関西電力だけでなく規制委員会や新規制基準に対しても厳しい目を注いでいる点です。あまりに当然のことですが、注目すべきポイントです。「安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠だ」としています。また「関電と規制委員会がこの点に意を払わないなら、新規制基準策定に向き合う姿勢には非常な不安を覚える」とも指摘しています。表現は感情を抑制していますが、福島原発事故の原因究明がなされないなかで、安全対策が行われたとして規制委員会の審査に通過して再稼働したことを指摘し、関電と規制委員会を厳しく糾弾しています。
仮処分は「過ちに真摯に向き合うなら、〜過酷事故が生じても致命的な状態に陥らないようにするとの思想に立ち新規制基準を策定すべきだ」としています。福島原発事故の災禍を直視するなら、決定的事態に至らないように新規制基準は原発を厳格に規制しなければならないということでしょう。そして、「関西電力の主張や説明の程度では、新規制基準と設置変更の許可がただちに公共の安心、安全の基礎となると考えることはためらわざるを得ない」とも断じています。ここでは関電の主張や立証を問題にしていますが、重要なポイントであると考えます。
仮処分決定は、「人格権が侵害される恐れが高いことについては、最終的な主張立証責任は申し立てた住民が負うと考えられる」としています。しかし、「関電が原子炉施設の資料の多くを保持し、原発を運転しているのだから関電が根拠や資料を明らかにすべだ」としています。また、「(関電の主張や説明は)規制委員会が関電に設置変更許可を与えた事実のみで、一応の主張と説明があったとすることはできない」と関電の姿勢を弾劾しています。大津地裁のこの判断は画期的だと思います。24年前の伊方原発の運転差し止めを求める裁判の最高裁判決で、立証責任は本来原告が負うものとしています。しかしその一方、「被告に相当の根拠、資料に基づいた主張や立証をする必要がある」としています。ただ実際の裁判などでは、立証責任の多くが原告や住民に負わされていました。
今回の仮処分決定では、過酷事故対策や最大の争点とされた耐震設計の目安となる基準地震動の関電側の立証や説明について、大津地裁は厳しい判断を示しています。福島原発事故の原因について関電は、津波の想定が不充分であったことを主張しています。これに対して大津地裁は、「福島原発事故の原因は津波だと特定されたわけではない。同様の事故を防止して安全確保対策を講じるために、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。この点について、関電の主張と説明は不充分である。」と断じています。また耐震性能についても、「当裁判所に十分な資料は(関電から)提供されていない」とか「相当な根拠、資料に基づき(関電が)主張と説明をすべきところ、〜認めるに十分な資料はない。」などと関電に対して厳しい判断を下しています。
今回の仮処分決定は、基本的に高浜原発がそもそも危険な存在だという前提に立っています。しかし、仮処分決定を下した大津地裁の山本善彦裁判長は、2014年の再稼働前の高浜原発3・4号機をめぐる仮処分申請を「規制委員会がいたずらに早急に、再稼働を容認するとは考えがたい。差し止めの必要はない」として申請を却下しています。また山口地裁では、上関原発建設予定地をめぐり、山林の入会権確認を求めた訴訟で住民側の請求を退けています。このように、山本裁判長は、必ずしもいわゆる「反原発派」とか「脱原発派」とか呼ばれる裁判長ではありません。山本裁判長は、合理的で常識的な判断を下したに過ぎません。
「原発訴訟は最高裁判所の制約が厳しく、裁判長の個人的判断を下すことはできなかった。原発推進政策に反する判決を出せば、左遷させられることを覚悟しなければならなかった。しかし福島原発事故後、裁判長の柔軟な判決を最高裁も容認するようになった。」というような報道もあります。しかし、三権分立、裁判や裁判官の独立が憲法で保証されているにもかかわらず、最高裁は違憲立法審査権を事実上放棄し、政権の政策に寄り添った判決を連発してきました。原発訴訟でも、原発差し止めの判決や仮処分決定が数例下されていますが、おおむね住民側の主張が退けられている流れに大きな変化はないと思います。
国家権力は従来の住民側勝訴の判決や仮処分決定について、裁判長を「変わった」思想の持ち主で「個人的」感想を判決などに盛り込んだ例外的な属人的行為としてとらえていました。しかし、このところ住民側勝訴の判決や仮処分決定が下される頻度が高くなっていることも事実です。そもそも裁判は、独立が保証されながらも国家機関に属する裁判官によって、権力が定めた法の枠内で結果が出されます。とは言っても、国民の意見を完全に無視することはできません。だからこそ、法廷の外の声、反原発の声を盛り上げることが重要になると考えます。市民や労組が反原発の団結力を街頭や職場などで発揮し、原発廃炉の機運を盛り上げましょう。それが第2第3の山本裁判長を出現させることになります。
NAZEN 山陰 福間
by nazensanin
| 2016-03-15 20:58
山陰で原発再稼働阻止・全原発の即時廃止をめざす! 米子市道笑町3-24-202 tel・fax 0859-22-9908 福間育朗 090-4576-1161 gr5536qu6e359dre23nd@docomo.ne.jp
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